Japanische Klassiker mit Furigana
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おぼるるもの
溺るるもの
豊島 与志雄
Lesen Sie 溺るるもの (おぼるるもの) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.690 Zeichen · 36 Bildschirme
その眼附が花弁のように盲いている。――彼女の皮膚は、場所柄になく非常に細やかで綺麗だった。
四五回に一度くらいは、私も彼女の我儘を聞いてやった。だがつまらなかった。その後では淋しくなった。
長襦袢一つで鏡台の前に坐ってる彼女の顔が、変に私の頭の中に刻みこまれた。後ろから見ると、布天神髷の赤い鹿子絞と、翼のように耳の上にかき上げられてる両の鬢と、白い頸筋とだけだが、一寸位置を変えると、深々と澄んでる鏡の面に、彼女の顔がくっきり浮出してるのが見えた。軽い斜視の両の黒目が近寄って、二重眼瞼の方へ上目にじっと見据えられてるきりで、額からなだらかな線の頬や※(「臣+頁」、第4水準2-92-25)へかけて、一つの筋も皺もないただ真白な顔が、能面のようにして空に懸っている。その面が、私の眼を鏡の底に見出すと、ふいに、だが如何にも自然に、淋しい笑みを頬に浮べる……。そして見返った時にはもう、生々と血が通ってる顔だった。
「おかしいわ。あたしなんだか極りが悪くなっちゃって……。飲みましょうか。」
私はまた、此度は彼女と交る代るに、杯を取上げた。彼女は多くは飲めなかった。