Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうねん
潤一郎ラビリンスI――初期短編集
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 潤一郎ラビリンスI――初期短編集 (しょうねん) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 41.319 Zeichen · 84 Bildschirme
「あれは何だろう」
こう云いながらも、私は油断なく耳を傾けた。
「あれは姉さんがピアノを弾いて居るんだよ」
「ピアノって何だい」
「オルガンのようなものだって、姉さんがそう云ったよ。異人の女が毎日あの西洋館へ来て姉さんに教えてやってるの」
こう云って信一は西洋館の二階を指さした。肉色の布のかゝった窓の中から絶えず洩れて来る不思議な響き。………或る時は森の奥の妖魔が笑う木霊のような、或る時はお伽噺に出て来る侏儒共が多勢揃って踊るような、幾千の細かい想像の綾糸で、幼い頭へ微妙な夢を織り込んで行く不思議な響きは、此の古沼の水底で奏でるのかとも疑われる。
奏楽の音が止んだ頃、私はまだ消えやらぬ ecstasy の尾を心に曳きながら、今にあの窓から異人や姉娘が顔を出しはすまいかと思い憧れてじっと二階を視つめた。
「信ちゃん、お前は彼処へ遊びに行かないのかい」
「あゝ徒らをしてはいけないって、お母さんがどうしても上げてくれないの、いつかそッと行って見ようとしたら、錠が下りて居てどうしても開かなかったよ」
信一も私と同じように好奇な眼つきをして二階を見上げた。
「坊ちゃん、三人で何かして遊びませんか」