Japanische Klassiker mit Furigana
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しおかぜ
潮風
豊島 与志雄
Lesen Sie 潮風 (しおかぜ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.018 Zeichen · 25 Bildschirme
持ち逃げするような気のきいた品物が一つだってあるかい。いやに忠義ぶって、とんちきめ、起きてるなら起きてるで、肴でも拵えてこい。何かあるだろう。おい、なぜ黙ってるんだ。御新香でもなんでもいい、持ってくるんだ。それに酒だ。早くしないか。早く寝ちまうんだ。寝ろったら……。」
ふだんおとなしい片野さんが、怒鳴りだしたのには俺も驚いた。佐代子はすっかり面喰って、まごまごして泣き出してしまった。泣きながら、酒の用意をしだした。
「気のきかない奴ばかり揃ってやがる。」
片野さんは立ち上って、よろけながら下駄をつっかけて、便所にいった。
片野さんは便所から戻ってくると、電燈のきえてる板場の方をすかし見た。そこの隅っこで、佐代子が、泣きながら何か用をしていた。
「もういい、もういい。なんだ、泣いてるのか。ばかだな。」
片野さんは寄っていって、彼女の肩に手をかけた。何かびくりとしたようだった。
「泣く奴があるか、ばかな。こっちいこいよ。」
佐代子はなおすすりあげた。
「もういいったら……。」
片野さんはその肩を抱いていた。佐代子は片野さんの胸によりかかるようにして、袂を顔に押しあてながらされるままになっていた。