Japanische Klassiker mit Furigana
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ひのついたかかと
火のついた踵
宮本 百合子
Lesen Sie 火のついた踵 (ひのついたかかと) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.781 Zeichen · 34 Bildschirme
二人の会話をきき、歩き廻っていた英一、殆ど、顔色を変え、
英一 谷! やめろ。まるでみさ子さんを苦しめているじゃあないか!
谷 (微かな亢奮を持ち)苦しめるのじゃあない。終局に於て、持っていられる感情を、一層純粋に生かすためだ。
英一 傍で聞いては、まるで誘惑しているとほか思えやしない!
谷 ――橋詰。君の態度は、失敬ながら、崇高じゃあないよ。他人を非難することは、何も自己の優越を表しはしない。――(英一を見守り)男一人の心、で当ったらいいじゃあないか。(独白的に)君のみさ子さんに対する友情はよく判っているよ。
英一、みさ子の方をちらりと見、あわてて何か云おうとする。みさ子、二人の会話はきかず、掌に顎をのせて考えている。この時、さっと立上り、考えを変えようと、頭を振り。
みさ子 さあ……もう議論はやめ。――紅茶でも入れさせて来ましょうね。(去る)
沈黙、穏やかでない雰囲気の裡に、谷、英一、顔を見合せず、動かず、幕。
第二 庭
常緑樹の深い植込み。間を縫って、奥の方に小径があり、上手、屏風のように刈込んだ檜葉(ひば)の下には、白い石の腰架(ベンチ)が一つある。
傾いた午後の日が、穏やかに明るく、緑樹の梢、腰架の縁などを燦めかせる。