Japanische Klassiker mit Furigana
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ひのついたかかと
火のついた踵
宮本 百合子
Lesen Sie 火のついた踵 (ひのついたかかと) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.781 Zeichen · 34 Bildschirme
却って、薄すり雲の湧上った今の方が、遙に人間(ヒューメン)的で、あなたの情熱も純粋さも美しく見える。(みさ子の顔を見る)
みさ子 (漠然と不安を感じる)何を云っていらっしゃるの。美しければ美しいほど猶結構じゃあないの。――さあ、裏へ行きましょうよ、あんなに薔薇、薔薇って云ってらっしゃった癖に……(谷を促す)
谷 じき行きます。然しね、実際、僕は、いつかきっと今日のような時が来ると思っていたんですよ。まるで、軽風に頬を吹かれて、花束を振るようなあなたが、いつか、自分の愛や、人間の愛ということに就て、深い疑や苦しみを味うようになるだろう。そうしたら、始めて、私の、あなたに対して持っている心持も理解して貰えるだろうとね。
みさ子 (疑わしそうに、凝っと谷の顔を見守る)私、自分の苦しみや寂しさを、たとい、誰にでも、利用されてはいられなくってよ。
谷 まるで異う。一つの道から、もう一つ先の、明るい、輝やいた路へ出る手助けを、僕ならさせて頂けると信じていたのです。僕の、あなたに対する愛は――云うことを許されれば――恐らく、あなたの御良人のように、所有慾から生れたものでもなければ、英一君のように、自分の無力を偽善で被うたものでもありません。