Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かせいのうんが

火星の運河

江戸川 乱歩

Lesen Sie 火星の運河 (かせいのうんが) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.715 Zeichen · 10 Bildschirme

Aozora Bunko

そして、胃の腑の受け容れるだけ、水銀の様に重い水を飲んだ。

そうして踊り狂いながらも、私は何か物足らなかった。私ばかりでなく周囲の背景達も、不思議に緊張をゆるめなかった。彼等はこの上に、まだ何事を待ち望んでいるのであろう。

「そうだ、紅の一いろだ」

私はハットそこに気がついた。このすばらしい画面には、たった一つ、紅の色が欠けている。若しそれを得ることが出来たならば、蛇の目が生きるのだ。奥底知れぬ灰色と、光り輝く雪の肌と、そして紅の一点、そこで、何物にもまして美しい蛇の目が生きるのだ。

したが、私はどこにその絵の具を求めよう。この森の果てから果てを探したとて、一輪の椿さえ咲いてはいないのだ。立並ぶ彼の蜘蛛の木の外に木はないのだ。

「待ち給え、それ、そこに、すばらしい絵の具があるではないか。心臓というシボリ出し、こんな鮮かな紅を、どこの絵の具屋が売っている」

私は薄く鋭い爪を以て、全身に、縦横無尽のかき傷を拵えた、豊なる乳房、ふくよかな腹部、肉つきのよい肩、はり切った太股、そして美しい顔にさえも。傷口からしたたる血のりが川を為して、私の身体は真赤なほりものに覆われた。