Japanische Klassiker mit Furigana
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はいいろのきおく
灰色の記憶
久坂 葉子
Lesen Sie 灰色の記憶 (はいいろのきおく) von 久坂 葉子 (くさかようこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 65.588 Zeichen · 132 Bildschirme
自殺することは、今までのあらゆる抵抗の最もちぢめられたしかも最も大きなものである筈なのに、抵抗する力を失ってよくも生への抵抗を試みたものだと自分で苦笑した。筆と硯を持ってこさし、ちり紙の上にいたずら書を始めたのはその又翌日であった。私は無感動であった。おめおめ生きかえった自分に恥辱を感じなかったし、こんな事件を起して申訳ないという殊勝な気持も起らなかった。空虚は、その事件前よりかなり私の心を占めていた。でたら目な文章を大きな文字で天井をむいたまま筆をすべらした。
医者は毎日二回来て、私に注射した。年寄りの付添さんが午後にやって来て私の体をさすった。一週間もそうしてすぎた。私は杖をついて歩くことが出来るようになった。家族は私の死に対して何の口出しもしなかった。私の机の中は元のままで遺書だけ取り除いてあった。私はすぐに又死にたいという衝動は起らなかった。もうどうでもよく、生きることと同じように死ぬことさえ面倒に思われた。年があらたまってからも私はそんな気持を抱いたまま会社へ出ていた。分家氏にも既に毛頭の興味なく、他に新しく入社した若い子達に何ら心動かされなかった。