Japanische Klassiker mit Furigana
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はいいろのきおく
灰色の記憶
久坂 葉子
Lesen Sie 灰色の記憶 (はいいろのきおく) von 久坂 葉子 (くさかようこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 65.588 Zeichen · 132 Bildschirme
病気をしていない時は、相変らずの英雄生活がつづいた。支那事変や関西風水害が起った頃である。凡そ、自分以外のことには無関心であったから、その頃の子供達は兵隊さんや従軍看護婦に憧れはじめたものだが、私は一向に興味がなかった。日の丸の旗をかいて、停車場や波止場に送りに行ったこともあるが、戦争がきらいだということもなく、善悪の判断などわかる筈もなかった。――相変らず私は、ある種のスリルを満喫していた。
そのうちに、踊りの稽古が、あまり派手好みでない母に、少々面倒にもなったのか、姉の脚も、すっかり人目にわからなくなったので、共々、私までやめさせられてしまった。ピアノは、やさしいソナタ位弾けるようになっていた。別に努力もせず気まぐれに弾いていた。
しかし、ここにふたたび私の心はぴっしゃんこにつぶれてしまう時が来た。
ある放課後、私は五人の女の児をひきつれて大きな御邸の前へ来た。庭にテニスコートがあり、そのあちら側にたくさんのけしの花が咲き乱れている。私はそれがほしくてたまらなかった。他の女の児達もほしがった。金網越しにそれを眺めていた。私は遂に決心して、ランドセルとおべんとう箱を、矢庭に道路へ投げすてると、金網を登りすばしこく越えはじめた。