Japanische Klassiker mit Furigana
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はいいろのきおく
灰色の記憶
久坂 葉子
Lesen Sie 灰色の記憶 (はいいろのきおく) von 久坂 葉子 (くさかようこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 65.588 Zeichen · 132 Bildschirme
それに、外出好きの母であったから、私に一人、つきっきりの乳母が居り、一日中面倒をみてくれていたのだから、私の涎掛も、きれいな縫取のあるのが、たえずかえられていたにちがいない。乳母は太っており真白の肌をしていた。両方の乳房が重たく垂れており、私は、右手の指をしゃぶりながら、その柔かいあたたかい乳房を左手でいじくりまわしていた。夜、眠る時も、父母は私の傍に居らず、乳母の両乳の間に顔を押しつけて眠っていた。
その頃、生まれつきよわかった兄のために、紀州の海岸に別荘を借りた。兄、姉、私と、すぐ後に生まれた弟と、乳母と女中が海岸の別荘に生活するようになった。真白で広い浜辺の端に、高い石がけの平家があり、私はそこで波の音を四六時中きいていた。ひる間はその波音が退屈しのぎであり、いろんな夢を思い起させたりしたが、夜中にふと目をさますと、それは恐しい魔物の声のように思えた。そんな時、私はしくしくと泣き出して、乳母の乳房に耳を押しつけた。
こまかい白い砂地は、私を無性によろこばせた。汀をぺたぺた素足で歩く。と、すぐにその足あとは波に消されてしまう。どんなにゆっくり、じわっと足あとをつけても、すぐにそれはあとかたなく波のためにさらわれてしまう。