Japanische Klassiker mit Furigana
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はいいろのきおく
灰色の記憶
久坂 葉子
Lesen Sie 灰色の記憶 (はいいろのきおく) von 久坂 葉子 (くさかようこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 65.588 Zeichen · 132 Bildschirme
「何故、この学校を選びましたか」
私は即座に近いからだと答えた。彼は苦笑した。めでたく入学出来てからきいたのであるが、近いから来たと云ったのは私一人で、それが随分無礼なことだったらしい。
数学の問題は案の定間違えた。膝の上へ数字を指でかきながらやっと云いなおして、よろしいと云われた。後はだいたい出来たようであった。
合格発表もみにゆかなかった。落ちる不安は全くなかったからである。四月になって手提げカバンを持ち家から十分とかからない女学校へ毎日通い出した。朝、私は皆が登校する二時間前に学校へ来ていた。ぞろぞろ並んで歩くことは非常な苦痛であったからだ。そうして、しんとした教室へ鞄を置くと一段と高いところにある運動場へのぼり、朝礼台に寐そべって、街をみおろした。つまりそれは健康な習慣であったのだ。私は、強い信念や高い誇を更に増すことが出来た。広い場所に一人で、乱雑な街を大手ひろげて抱くことが、私にとって又新しく起った英雄的な喜びであった。しかし、その男性のような強がりな気持と、数珠を持ち阿弥陀にすがる気持とが、両極から私をしめつけて来て苦しみ出しはじめたのはまもない頃であった。