Japanische Klassiker mit Furigana
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はいいろのきおく
灰色の記憶
久坂 葉子
Lesen Sie 灰色の記憶 (はいいろのきおく) von 久坂 葉子 (くさかようこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 65.588 Zeichen · 132 Bildschirme
戦災にあって残った倉庫を改良し事務所にしているほこりっぽいところを、毎朝殆ど一人で掃除をした。この会社のおえらえ方は、みな丁稚上りであったから、細いことにいちいち気付いて、若いものはしかられ通しであった。私の仕事は、掃除と御茶汲みと新聞をとじたり郵便物を整理したりの雑用であり、おもに秘書の命令で働きまわった。
指先が真っ赤になり、がさがさの手がじんじんする頃、他の女店員達は通勤する。そうして申訳に箒やはたきをもったり、花の水かえをやる。おひる近くになると、七輪に火をおこして、おべんとうを暖めたり、火鉢に火をつぎ足したりする。得意先や、日本一だという毛織物会社の人が来ると、――この会社の一手販売をしている卸売業なのである――上等の御茶を、上等の茶器を使って出す。お湯はたえずたぎらせておかねばならない。濃すぎても、うすすぎても、日本一の毛織物の人達は堂々と文句をいう。下っ端の若僧でも、こちらの重役は平身低頭している。寒い受付にすわっていて、彼等がやって来ると、
「マイド、ドウモ」
と挨拶する。名前でもきこうものなら、大へんな見幕である。昼間から麻雀のサーヴィスや御馳走をする。