Japanische Klassiker mit Furigana
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むめいさっかのにっき
無名作家の日記
菊池 寛
Lesen Sie 無名作家の日記 (むめいさっかのにっき) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.441 Zeichen · 43 Bildschirme
それは、俺は中学時代に作文が得意であったという、愚にもつかない原因だった。こんな、少年時代の出来心で選んだ生涯の道程を、今となっては是が非でも、遂行しなければならぬ羽目にいる俺を、つくづく情なく思う。
それにしても、高等学校にいた頃は、少しは自信があった。自信があったというよりも、自分の真実の天分なり境遇なりを、自分でごまかしていくことができたのだ。ことに、山野や桑田などの、燃ゆるような文壇的野心や、自惚に近い自信が、俺にもいくらか移入されていたせいかも知れない。高等学校にいた頃、寝室で皆が一緒に枕を並べて寝る時は、文壇についての話のほかは、ほとんどなにもしなかった。ことに、川崎純一郎氏の活躍ぶりが、よく我々の話題となっていた。川崎氏は、俺たちにいちばん近い目標であった。あの人の眩しいほどに燦然たる出世が、その頃の俺たちの心を、どんなにそそっただろう。桑田は、そんな話が出ると、燃ゆるような瞳をして、
「なあに! 僕たちの連中だって、今に認められるさ。誰か一人有名になれば、もうしめたものだ、そいつが、残りの者を順番に引き立てていけばいいんだ」と、桑田は、その最初に名を成す者が、自分であるような自信をもっていった。