Japanische Klassiker mit Furigana
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むげつものがたり
無月物語
久生 十蘭
Lesen Sie 無月物語 (むげつものがたり) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.485 Zeichen · 36 Bildschirme
へ下って行った。
泰文が京にいなくなると、魔党畜類が姿を消したような晴々しさになった。長男の文雄も仮寧し、一家団欒して夢のように楽しい日を送っていたが、ある日、長女の葛木姫が、
「父君がいなかったら、なんとまあ毎日が楽しいことでしょう」
と思いつめたように、つぶやいた。
それはみなの心にあって、口に出さずにいたことだったが、こういう日日が永久につづけばいいというのは、誰しもが願うところだったので、文雄が、
「父帝(後白河法皇)へお願いしてみよう」
といい、泰文が家名に傷をつけぬよう、京に帰さず、このうえとも長く敦賀へとめおかれるようにという願文をつくり、兄弟三人の連名で上書した。
泰文のほうは、いちどは素直に勅を受けたものの、もともとこんな潮くさいところに居着く気はない。関白基房は基道の伯父で、基実が死んだとき基道が小さかったので摂政になったが、基道の義母は清盛の女の盛子で、平氏と親戚関係になっていることから、基道にたいする清盛のひいきが強く、基房はあるかなしかの扱いを受けていた。泰文はその辺の機微をのみこんでいるので、五位ノ侍従だった基道の筋に途方もない金を撒き、公然と流罪赦免の運動をした。