Japanische Klassiker mit Furigana
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むげつものがたり
無月物語
久生 十蘭
Lesen Sie 無月物語 (むげつものがたり) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.485 Zeichen · 36 Bildschirme
あたりの青侍や下司をおしつけて孕まれでもしては事面倒である。どうしようかと首をひねったすえ、そんならば、父親の自分が娘の恋人の役を勤めたらよろしかろう、これ以上安上りなことはなく、手軽でもあり安心でもあると考えきわめ、花世を呼んで、こんな罰あたりなことをいって丸ろめこみにかかった。
「お前も、いずれは子をひりだす洞穴を持っているわけだが、おなじ生むなら、聖人になるような立派な子を生むがいい。父が自分の娘を知ると、生れて来る子供はかならず阿闍梨になる。聖人はみなそのようにして生れでたもので、母方の祖父こそ、じつは聖人の父親なのだ」
泰文の卑しい眼差にあうなり、花世は父がいまどんな浅間しいことを考えているか、すぐ感じとってしまった。
「なにをなさろうというのです」
「だから、おれがその骨の折れる仕事をしてやるというのだ」
「そんなことは嫌でございます」
「欲のないやつだ。父のおれがこういうのだから、否応はいわせない」
途方もない話だが、信じられないような奇怪な交渉が、夏のはじめまでつづけられた。抵抗すれば息の根がとまるほど折檻されるので、気の毒な娘は、そういう情けない生活を泣く泣くつづけていくほかはなかったのである。