Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しょうどにのこるかい

焦土に残る怪

田中 貢太郎

Lesen Sie 焦土に残る怪 (しょうどにのこるかい) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 1.076 Zeichen · 3 Bildschirme

Aozora Bunko

「おう、あついか、あついか」

女の足は早くなった。

「もうすこしじゃ、あついか、もうすこしじゃ」

その時背の嬰児がひいひいと云うようにないた。

「おう、おう、おう」

女は狂人のようになっていた。

「あついか、おう、あついか、もうすこしの、しんぼうじゃ」

女はそのまま海の方へ往ったが、みるみるその姿は海の中へ消えて往った。

これもやはり函館の大火が生んだ怪談である。某運転手が自動車をあやつって深夜の海岸を走っていた。そこは根崎海岸のドライブ道で、道幅もかなり広いし、それに障碍物がないので、運転手はいい気もちになってスピードを出していた。

と、その車の前にふらふらと飛びだして来たものがあった。運転手ははっとして、機械的にブレーキをかけた。車はその怪しい物の数間てまえでやっと停った。そこにはヘッドライトの燈に照らされて角巻をした壮い女がいた。女は何者かに追われてでもいるように非常にあわてていた。

「助けてッ」

女は蒼白い顔に髪をふり乱していた。

「助けてッ」

女の声がまた聞えた。それを見ると運転手は捨てておけないのでいきなり扉を開けた。

「どうした、どうした」

運転手はそのまま女の傍へ往った。