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Japanische Klassiker mit Furigana

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ぼんのうひぶんしょ

煩悩秘文書

林 不忘

Lesen Sie 煩悩秘文書 (ぼんのうひぶんしょ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.705 Zeichen · 173 Bildschirme

Aozora Bunko

夕暮れ近い部屋である。

出羽守は、またすっぽりと覆面を下ろして、その、倒れている千浪の姿をまじまじと凝視めて、頭巾の中で隠れ笑いをしている様子だったが、やがて手を鳴らして、障子際に手を突いた番頭の与助へ、

「酒が所望じゃ。」

と命じた。

この、気絶している千浪を眺めながら、それを肴に一杯やる気と見える。

「へい。畏りました。」

と答えた与助は、前から怪しいと睨んでいた二人連れなので、じっと倒れている千浪へ眼を返し、

「御新造さまは、どうかなさいましたので。」

「うむ、いや、なに、ちょっと眠っておるのだ。遠道をすると足弱はことのほか疲れると見えるのう。」

「いえ、もう、御婦人方はごもっとも、お床をとらせましょうか。」

「いや、それには及ばぬ。ほどなく覚めるであろうから。」

頭巾のなかからそう言っている出羽守を、敷居際でお辞儀をしながら与助は、素早くじろりと見て、

「それでは、ただ今御酒を――。」

と障子を閉めて、階下へ下りたのだったが――。

合言葉

梯子段を下りた与助は、そこの土間へぶらりとはいって来た主人の文珠屋佐吉を認めて、

「おう、親分。」

と声をかけたが、その佐吉の背後から、もう一人、あの二階にいる白覆面と同じ弥四郎頭巾、同じ白絹にさいころの紋付、同じような朱鞘を腰に、懐手ではいって来た侍を見ると――狐