Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ぼんのうひぶんしょ

煩悩秘文書

林 不忘

Lesen Sie 煩悩秘文書 (ぼんのうひぶんしょ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.705 Zeichen · 173 Bildschirme

Aozora Bunko

見下ろす。

「どうしてこんなところにつづら笠が――。」

つぶやきながら、宗七が手をかけて笠を除ると、下には、小石を重しに載せて一枚の紙が置いてある。

宗七が拾い上げて、大次郎に渡した。

「はてな。何人が残しておいたものか。ことによると、佐助ではないかな――。」

ふたつ折りの紙をひらくと、さらさらと矢立てを走らせたらしい墨のあと。

「約束どおりこの山へ来り候えども、思う仔細ありて、両人を待たず、一足先に下山仕り候と申すは、昨夕登山のみぎり、この下の猿の湯にて、江戸女と覚しき見目うるわしき女子を見初め、この七年間、何ものにも眼をくれず、黄金のみ追い来りし文珠屋佐吉。ぞっこん恋風とやらを引き申候。これより猿の湯に引き返し、強談もて娘を申し受くる所存に候。御存じのとおり、生れつき不具同然の醜面にて、おなごに縁うすき佐助の初恋。ゆめお嗤い下さるまじく、いずれは再び七年後に、この山頂にて御面談仕るべく、まずは一筆、こころの急くまましるし残し申候。

江上佐助あらため、

文珠屋 佐吉」

大次郎、手がふるえて、紙が、かさかさと細かい音を立てた。