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Japanische Klassiker mit Furigana

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ぼんのうひぶんしょ

煩悩秘文書

林 不忘

Lesen Sie 煩悩秘文書 (ぼんのうひぶんしょ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.705 Zeichen · 173 Bildschirme

Aozora Bunko

「小信様! お見かけするところ、あなたあ変な御様子だがこりゃあまあいったいどうなすったというので――あの出羽、いや、祖父江出羽さまのお眼に留まって、田万里から伴れ出されてから、今までどこにどうしてお暮らしなされた――。」

と彼は、真剣の色を面にあらわして、小信の顔をさし覗くのだった――。

相手は、うつ向いて袂の端を弄んでいるきり、答えない。

お多喜は先刻、八幡のお社の縁の下で、この小信を発見けて家へ伴れ帰った顛末を話した後、

「気が違っておいでなんだもの。何を訊いても、分別のつくわけはないよ。それにしてもお前さんは、あたしの識らないことばかり言い出すんだねえ。祖父江出羽守だの、田万里だのって――この女は小信さんって名で、その伴何とかさんの姉さんだって。」

お多喜が不審に思うのは当然で、有森利七の宗七は、じぶんの出身については、女房のお多喜にも何ひとつ明かしてないのである。

夫婦の会話をぼんやり聞いている小信は、まるで薄桃色の霞のなかに生きているような気がするだけで。

何の記憶も、意識もない。

だが、いま――。

田万里、祖父江出羽守、伴大次郎――という名を耳にしたかの女のこころに、朧気ながら、恐ろしい思い出が甦ってくる。