Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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もゆるほお

燃ゆる頬・聖家族

堀 辰雄

Lesen Sie 燃ゆる頬・聖家族 (もゆるほお) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.309 Zeichen · 144 Bildschirme

Aozora Bunko

が、その窓を通して、しっきりなしに汽船のサイレンがはいってきた。その聞きなれない異様な叫びは、自分がいま東京から離れている、目に見えない長距離を、一瞬間、私の目に浮び上らせそうにした。そういう喧騒の中からひょっくり生れてきかかった一種の旅愁に似たもの、――私は再び窓を閉じた。……

そうすると今度は、私の背中合わせの部屋から、タイプライタアの何かにじゃれているような音が聞えてきた。が、それはだんだんいらいらしたような音に変りながら、すぐ止んでしまった。私はゆうべこのホテルに着くなりすぐ目に入れたところの、廊下の隅にほうり出されていた、錆びかかったようなタイプライタアを思い出した。――それにしても、一体いまは何時ぐらいなのか少しも分らない。まだ朝飯は食わしてくれるのかしらと思いながら、私はボオイを呼ぶために、窓とは反対の側の、ドアを開けてみた。食堂は私の部屋と隣り合わせになっているらしい。そこからは途切れ途切れな話し声に雑ってときどき皿にぶつかるスプーンやナイフの音が聞えてくる。……しかしそれは誰かがまだ朝飯を食べているのか、それとももう昼飯を食べ出しているのか、わからない。