Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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もゆるほお

燃ゆる頬・聖家族

堀 辰雄

Lesen Sie 燃ゆる頬・聖家族 (もゆるほお) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.309 Zeichen · 144 Bildschirme

Aozora Bunko

熱は体温表の上で一時非常にジクザクな線を描いたが、そのジクザクは次第にその振幅をちぢめて行きながら、遂に完全に赤線(三十七度)以下になった。だが、彼の身体はまだ何処となく不安定だった。そしてひっきりなしに身体のあちらこちらに、丁度大地震のあとに起る無数の小さな余震のように、或は頭痛が、或は神経痛が、或は歯痛が次ぎ次ぎに起った。彼はそれらの余震になおも怯かされながら、しかし次第に、露台のまわりでうるさいくらい囀りだした小鳥たちの口真似をしてみたり、裏の山から腕いっぱい花を抱えて帰ってくる看護婦に分けて貰って薬罎にさした竜胆や鈴蘭などの小さな花の香りをかぎながら、彼は生き生きとした呼吸をし出した。

或る日から彼も日光浴をすることになった。

彼は看護婦から紫外線除けの黒眼鏡を受取ると、それをすぐに掛けながら子供のようにいそいそと露台に出て行った。そして彼は初夏の太陽をまぶしそうに見上げながら、それに向って話しかけでもするように独語するのであった。

「おお、太陽よ、おれも昨日までは苦痛を通して死ばかり見つめていたけれども、今日からはひとつこの黒眼鏡を通してお前ばかり見つめていてやるぞ!」