Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ちち

父

金子 ふみ子

Lesen Sie 父 (ちち) von 金子 ふみ子 (かねこふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.107 Zeichen · 21 Bildschirme

Aozora Bunko

「おいちょっと待て」

父の声である。私たちは父が米代をもって来てくれたのだと思って急に明るい心になった。ところが実際はそうではなかった。何と残酷な、鬼みたような男で父はあったろう。

立ち止まって救いを待っている私たちに近寄ると、父は大きな声でどなりたてた。

「とくの、よくもお前は人前で俺に恥をかかせたな。縁起でもない、おかげで俺はすっかり負けてしまった。覚えてろ!」

父はもう片足の下駄を手に取っていた。そしてそれで母をなぐりつけた。その上、母の胸倉をつかんで、崖下につき落すと母を脅かした。夜だから見えないが、昼間はよくわかる、あの、灌木や荊がからみあって繁っている高い崖下へである。

弟は驚いて母の背中で泣きわめいた。私はおろおろしながら二人の周囲を廻ったり、父の袖を引いて止めたりしたが、そのうちふと、そこから半町ばかり下の路傍の木戸の長屋に小山という父の友人のいることを憶い出した。おいおい泣きながら私はその家へ駈けこんだ。

「やっぱりそうだったのか……」とその家の主人は、食べかけていた夕飯の箸をほうり出して飛んで来てくれた。

私立学校へ通い始めて間もなく盆が来た。