Japanische Klassiker mit Furigana
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ちちのしゅっきょう
父の出郷
葛西 善蔵
Lesen Sie 父の出郷 (ちちのしゅっきょう) von 葛西 善蔵 (かさいぜんぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.047 Zeichen · 18 Bildschirme
「いや僕もそんなことも考えないわけではないがね、僕もじつはおやじのところへ帰りたいのだよ。いっさいを棄てて、おやじといっしょに林檎の世話でもして、とにかく永く活きる工夫をしたい。僕も死にたくないからね。このままで行ったんでは俺の健康も永いことはないということが、このごろだんだんはっきりと分ってきた。K君、おふくろ、T君はまたあんなことになるし、今度はどうしても俺の番だという気がして、俺もほんとに怖くなってきた。ここは昔地獄谷といって罪人の刑場だったそうだが、俺はただ仏様のいる慈悲の里とばかり思ってやってきたんだがね、そう聞いてみるとなるほどこの二年は地獄の生活だったよ。ここを綺麗にして出るとなると七八百の金が要るんだがね、逃げだしたためT君のような別な地獄へ投りこまれることになるかもしれないがね、それにしても死神に脅かされているよりはましだという気がするよ。僕はどうかするとあの仏殿の地蔵様の坐っている真下が頸を刎ねる場所で、そこで罪人がやられている光景が想像されたり、あの白槇の老木に浮ばれない罪人の人魂が燃えたりする幻覚に悩されたりするが、自分ながら神経がどうかしてる気がして怖くなる……」