Japanische Klassiker mit Furigana
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ちちすぎやましげまるをかたる
父杉山茂丸を語る
夢野 久作
Lesen Sie 父杉山茂丸を語る (ちちすぎやましげまるをかたる) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.127 Zeichen · 25 Bildschirme
アイツはタダの正直者じゃない」
全く以てその通りであった。
その後度々上京したが、時々思い出したようにコンナ事を云った。
「俺が今死んだら貴様はドウするか、他人の厄介にならずに葬式が出来るか」
この言葉は平生、父が口癖のように云っている「子孫のために美田を買わず」という言葉と明らかに矛盾していたが、私はドチラも父の真情である事を知っていたので、わざと冷笑していた。「俺のような人間になるな」という事もよく云ったものであるが、これも父の或る悲しい、淋しい心理の一角を露出した言葉と察して、謹んで、うなだれていた。
その都度に私は母に説いて「お父さんが亡くなられたら私は簡単に火葬にして、お母さんや妹と一緒に三等車で九州へ引上げて、極く手軽い葬式をするつもりです。いいですか」と念を押していた。母はいつも涙ながらニコニコしてうなずいていた。
今年の七月十七日、香椎の球場で西部高専野球の予選を見ている中に、雇人の小母さんが泣きながら電報を持って走って来た。
「チチノウイツケツスクコイ」
私は一所に見物していた中学生の子供二人と一所にタクシーで家に帰り、妻に金の準備を命じ、そのままの服装で、ポケット四書と丘浅次郎氏の進化論講話を携えて又もタクシーに飛乗り全速力で博多駅に駈けつけ、富士に乗後れてサクラに間に合った。