Japanische Klassiker mit Furigana
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ちちすぎやましげまるをかたる
父杉山茂丸を語る
夢野 久作
Lesen Sie 父杉山茂丸を語る (ちちすぎやましげまるをかたる) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.127 Zeichen · 25 Bildschirme
その時はまだ私が生まれていない前だったから、果してこの通りの事を云ったかどうか保証の限りでないが、その後の父は正しく前述の通りの覚悟で東奔西走していたし、お祖父様やお祖母様も、母までも、その覚悟で、あらん限りの貧乏と闘いつつ留守居していた事を、私は明らかに回想する事が出来る。なつかしい、恨めしい、恐ろしい、ありがたい父であった。
父は或る時、お祖父様に舶来の洋傘のお土産を持って来て差上げた。それは銀の柄の処のボタンを押すとバネ仕掛でパッと拡がるようになっていたので欲しくてたまらず、コッソリ持出して廊下でボタンを押してみたが、どうしても開かないので、失望して、又ソット、モトの押入れに入れた。何だか恐ろしかったので、逃げるように表へ出た。
又或る時、やはりお祖父様に、鼈甲縁の折畳眼鏡を持って来て差上げた。これも、その折畳まり工合が面白くて不思議なので欲しくてたまらず、そっと持出して引っぱってみる中に壊れてしまったらしい。お祖母様に大変に叱られた。
又或る時、父は自分が東京から冠って来た臘虎の頭巾帽子をお祖父様に差上げた。お祖父様は大層お喜びになって、御自分でお冠りになり、それから私に冠せてアハハハと大きな声でお笑いになった。