Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ぎゅうにゅうとうま

牛乳と馬

豊島 与志雄

Lesen Sie 牛乳と馬 (ぎゅうにゅうとうま) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.248 Zeichen · 25 Bildschirme

Aozora Bunko

を読んでいると、お姉さまが低い声でお言いなさった。

「ちょっと。」

台詞をとばした筈ではなかったがと、お姉さまの方を見ると、お姉さまは、宙に眼を据えて、何かじっと聴き入っておいでになる。いつまでもそのままだ。お母さままで、何か耳を澄していらっしゃるらしい。

お姉さまはふいに咳をなさった。

「馬の駆けるような音がしたんだけれど……。」囁くようなお声だ。

お母さまは編物の手を休めて、まだ耳を傾けていらっしゃる。

虫の声がするきりで、しいんとした夜だった。わたしもちょっと変な気がして、もう読むのをやめた。

そういうことが、時々起った。お姉さまの声はさまざまだった。

「ちょっと。」

「あ。」

「ほら。」

「ね。」

突然、眼を宙に据えて、戸外の気配に聴き入りなさる。お母さままで首をかしげて、じっと聴いていらっしゃる。わたしには何にも聞えないのだ。あとでお姉さまに伺うと、遠くの林の中を馬が駆けていたり、家のまわりを馬が歩いていたり、裏口に馬がふーっと鼻息を吐きかけたり、みんな馬のことばかりだった。

どうも少しおかしい。それに、お姉さまは、頬の赤みは増したようだし、深々とした黒目の色がいっそう深くなったようだし、前よりも鼻筋が通って皮膚が薄くなったようだし、お美しさに病的な感じが濃くなっていた。