Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ぼたん

牡丹

宮本 百合子

Lesen Sie 牡丹 (ぼたん) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.684 Zeichen · 26 Bildschirme

Aozora Bunko

幸雄は散歩――といっても庭内を歩き廻るためだけに、そのように威厳に満ちて生きているのだろうか。

石川に分っている病人の心持は、花が好きということだけであった。庭にまだ霜どけがする。その時分から、病人は枯芝の上を歩きつつ、

「ねえ石川、ダリヤの球根持って来とくれよ」

と注文した。

「少し早すぎましょう」

「いいよ、もういいよ、咲くよ」

石川は、その辺にころがっている腐った球根でもかまわずもって行って土に埋めて見せた。

「乾くといけないねえ、枯れると困るよ」

時候が時候だし芽の出ようはないのに、病人は楽しんで朝起きると、土に水をやった。夕方歩いても水をやる。一日の中を久しい間立って眺めて育つのを待った。春の彼岸頃、石川は今度こそ本物の球根を運んで来て花床に植込んだ。

「旦那、こっちの方がようございます。あれは駄目ですよ、もう」

「そうかい」

水をやりすぎるので、ダリヤは夏が来ると茎と葉ばかり堂々と丈高く繁った。青い繁みの頂上に、それでも少々赤い花がつく。石川が来るのを待ちかねて、病人は、

「咲いたよ――ごらんよ――よく咲いたねえ」

と、それがまるで貧弱な花でも実に悦ばしそうに賞めるのであった。