Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうごくのはんにち
牢獄の半日
葉山 嘉樹
Lesen Sie 牢獄の半日 (ろうごくのはんにち) von 葉山 嘉樹 (はやまよしき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.671 Zeichen · 16 Bildschirme
私は左の足でそれを蹴上げた。足の甲からはさッと鮮血が迸った。
――占めた!――
私は鮮血の滴る足を、食事窓から報知木の代りに突き出した。そしてそれを振った。これも効力がなかった。血は冷たい叩きの上へ振り落とされた。
私は誰も来ないのに、そういつまでも、血の出る足を振り廻している訳にも行かなかった。止むなく足を引っ込めた。そして傷口を水で洗った。溝の中にいる虫のような、白い神経が見えた。骨も見えた。何しろ硝子板を粉々に蹴飛ばしたんだから、砕屑でも入ってたら大変だ。そこで私は丁嚀に傷口を拡げて、水で奇麗に洗った。手拭で力委せに縛った。
応急手当が終ると、――私は船乗りだったから、負傷に対する応急手当は馴れていた――今度は、鉄窓から、小さな南瓜畑を越して、もう一つ煉瓦塀を越して、監獄の事務所に向って弾劾演説を始めた。
――俺たちは、被告だが死刑囚じゃない、俺たちの刑の最大限度は二ヶ年だ。それもまだ決定されているんじゃない。よしんば死刑になるかも分らない犯罪にしても、判決の下るまでは、天災を口実として死刑にすることは、はなはだ以て怪しからん。――
という風なことを怒鳴っていると、塀の向うから、そうだ、そうだ、と怒鳴りかえすものがあった。