Japanische Klassiker mit Furigana
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いちろうじん
犬田卯短編集二
犬田 卯
Lesen Sie 犬田卯短編集二 (いちろうじん) von 犬田 卯 (いぬたしげる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.383 Zeichen · 103 Bildschirme
やっていた。
するとそこへ四郎右衛門の老爺が再びのこのことやって来るのであった。庭先に立てられた「祝出征……」の旒を、彼はつくづくと見上げていたが、やがてまた、袖と袖の間に顔を埋めてさめざめと泣きはじめた。
泣いては顔を上げて、風に揺れる旒をしみじみと眺め、そしてまたしくしくとすすり上げるのである。
とうとう老爺は、みんなの集まっている縁先近くへやって来た。「諸君……」悲痛な叫びをまたしても上げたのである。それからあとは、地面をみつめ、声をあげて泣き、ややあって、
「わしは、農村の穀つぶしです。自殺しようかと思って考えているんです。」
そして右手を上げて、いきなり涙を打ち払い、すたすたと庭先から往来へ飛び出して行った。
「いよいよ怪しいな」と人々は顔を見合せた。
「飲んだんだあるめえか。さっき郵便屋が書留だなんて爺さまへ渡していたっけから。」
「久しぶりで娘から金が来たか。」
「そうらしかったな。」
「でも、あの顔は飲んだ顔じゃなかったぞ。」
「本当にキの字だとすると、これ近所のものが大変だな。」
心配し出したものもあった。しかしながらその翌日のこと、老爺は付近の家々を一軒一軒廻って歩いて、「俺は決して気なんか違っていない。