Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうかしあかちょこべえ
狂歌師赤猪口兵衛
夢野 久作
Lesen Sie 狂歌師赤猪口兵衛 (きょうかしあかちょこべえ) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.418 Zeichen · 79 Bildschirme
坂元の家は明智のざまの助
落着く先は瓦町のさき 赤猪口兵衛
と彫って朱が入れて在る。大方、石塔に入れる朱漆の残りを貰ったものであろう。
そうした門構えを入ると、本堂の阿弥陀様と背中合わせの板敷土間に破れ畳の二畳敷、竹瓦葺の板廂、ガタガタ雨戸に破れ障子の三方仕切は、さながらに村芝居の道具立をそのまま。軒先には底抜け燗瓶の中心に「く」の字型の古釘を一本ブラ下げた風鈴一個。短冊代りに結び付けた蒲鉾板の裏表には、これも定家様で彫込んだ狂歌に朱が入れてある。
すたれ釘世をすぢかいになり下る
底抜け徳利のチリンカラカラ
古釘と底抜け徳利の風鈴は
阿弥陀も知らぬ極楽の音
その蒲鉾板の裏表を手に取って引っくり返して見ながらニッコリと笑った良助は、その前の雨戸をガタガタと叩いた。大きな声で呼んだ。
「猪口兵衛どん、猪口兵衛どん。良助じゃ、良助じゃ」
雨戸の内側はシインとして人の気はいもない。
「モシモシ。坂元の孫兵衛どん。孫兵衛どん。御座るか御座らんか。まあだ寝ておんなさるとナ……。オイオイ」
と言うて耳を澄ますうちに、今たたいた雨戸が外側へバッタリと外れかかるのを、良助は慌てて両手で受止めながら小舎の中を覗き込んだ。