Japanische Klassiker mit Furigana
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きつねのねえさん
狐の姐さん
宮本 百合子
Lesen Sie 狐の姐さん (きつねのねえさん) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 1.077 Zeichen · 3 Bildschirme
九時過Nさんと自動車で、自分林町へ廻る。離れにKと寝る。いろいろ話し、若い男がひとの妻君に対する心持など、感ずるところが多かった。
――自分の妻君にされちゃ厭だと思うことは、ひとの奥さんにも仕ないのが本当だろう――
幾分警告的な意味で云ったが、嫉妬ということが、不図これまでの心持と違った角度から感じられた。「人間には嫉妬の本能がある」いつからか一般人の知識にこんな文句が入り込んで、その固定観念で自繩自縛に陥っている、そんな気がした。所有欲は本能だというのも同じだ。
七月○日 月曜日
暑し。
Yの発起で芝浦のお台場を見物に行く。芝浦から日覆いをかけた発動和船。海上にポツリと浮いたお台場、青草、太陽に照っている休息所の小さなテント。此方ではカフェー・パリスと赤旗がひらひらしている。市民の遊覧、ルウソーの絵の感じであった。陽気で愛らし。
溺死人の黒い頭、肩。人間の沢山いる棧橋の方へ、何か魂の引力みたいなもので漂って来まいかといいようなくこわかった。その傍を通り過た漁船、裸の漁師の踏張った片脚、愕きでピリリとしたのを遠目に見た。自分、段々段々その死んで漂って行った若い男が哀れになり、太陽が海を温めているから、赤い小旗は活溌にひらひらしているから、猶々切ない心持であった。