Japanische Klassiker mit Furigana
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ねことしょうぞうとふたりのおんな
猫と庄造と二人のおんな
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 猫と庄造と二人のおんな (ねことしょうぞうとふたりのおんな) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 68.020 Zeichen · 131 Bildschirme
それと云うのは、庄造が例の曲芸に熱中して幾らでも餌を投げてやるので、つい食い過ぎるせいなのであるが、晩飯の後でチャブ台を除けると、その辺に一杯毛が落ちていて、食いかけの魚の頭だの尻尾だのがたくさん散らばっているのである。
品子が嫁に来る迄は、台所の世話や拭き掃除は一切おりんの役だったから、リリーのためには随分泣かされている訳なのだが、今日まで我慢していたのは一つの出来事があったからだった。と云うのは、たしか五六年前に、無理に庄造を説き付けて、一度この猫を尼ヶ崎の八百屋へ遣ったことがあったが、やがて一と月もした時分に、或る日ヒョッコリ蘆屋の家へ独りで帰って来たのである。犬なら不思議はないけれども、猫が前の主人を慕って五六里の道を戻って来るとは、あまりイジラシイ話なので、それ以来庄造の可愛がりようは旧に倍したのみならず、おりんも流石に不憫を感じたのか、或は多少薄気味悪く思ったのか、もうそれからは何も云わないようになった。そして品子が来てからは、福子と同じ理由から、―――と云うのは嫁をいじめるために、却ってリリーの存在が便利を与えることがあるので、やさしい言葉の一つぐらいは時々かけてやっていたのである。