Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ねこぐるま

猫車

宮本 百合子

Lesen Sie 猫車 (ねこぐるま) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.310 Zeichen · 35 Bildschirme

Aozora Bunko

おさやは上気した顔でせっかちにバンバンやりながら、

「大きいもんはこれが一番ええ。朝鮮人からも習うことはあるもんじゃ」

お縫はおかしくなって、しずくのたれる古ぎれを竿にひろげてかけながら思わず笑った。おさやは本気な相好で、まるでバンと一つくらわせさえすれば、洗い物の方でよごれはさっと吐き出すという約束でも出来ているように、確信をもって、簡単にくらわして安心している。それはいかにも活気横溢の気短かいおさやらしい愛嬌である。

クスクス笑いながら竿をかけ代えようとしたら、物干竿をかける棒の二又のそれに荒繩でくくりつけられている松の枝に、小さい青い松ぼっくりが一つくっついているのが可愛らしくお縫の目にとまった。そしたら丁度その真上の明るい夕空に金色の星が出ているのにも気がついた。どちらも小さく綺麗なその二つの天のものと地上のものとを眺めていると、お縫は潤いのかけた日暮しのなかにいる自分の心に優しくふれて来るもののあるのを感じた。自分だけのそういう一刻を大切に心にふくんで味おうとするように、お縫はゆっくりと丁寧に重い黒い洗濯ものを竿にひろげて行った。

二年ばかり前、おさやは息子たちにせめては借金のほかにものこしてやるものをと、生命保険に入ることを思い立った。