Japanische Klassiker mit Furigana
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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
Lesen Sie 獄中への手紙 (ごくちゅうへのてがみ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 120.583 Zeichen · 240 Bildschirme
そっちが市内なのね、日の出あたりの埃のひどさお話にならず、市中塵埃全く目も口も開きかねました。細君と娘とは、野菜のために出かけました。大した骨折りよ、ね。この風、あの混む電車、距離。でも、ここの台所を見ると、あるのは、くされかかったゴボー1/3本だけです。正直な窮乏の姿よ、行かざるを得ません。
わたしは、前の手紙でお話したように、家じゅうとどろとどろで、おまけに寿江が来、まだ開成山からの娘も居り、寿江が例のとおり気づまりないかめしい在りようをしているので気が疲れて、迚も、出かけるからと云われて一緒に出てあのひどい駅で揉み通す元気がありませんでした。それで留守番をひきうけました。七輪に火をおこし、湯をわかし、ジャリジャリの顔を洗い、髪をとかし、おむすびをたべ、そして床に入って五時まで、ゆっくりと横になって居りました。
同じ東京でも、目下のところ第一線的地域にいる人間、やけ出された人しかいないような地域にいる者と、こうしてまだ傷かない土、春の樹木のある地域とでは、こんなにして横になっていても何とのびやかさが違うんだろうと、どこかの窓のカーテンが展かれたようないい心地です。