Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

Lesen Sie 獄中への手紙 (ごくちゅうへのてがみ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 215.557 Zeichen · 426 Bildschirme

Aozora Bunko

それを云ったときの父の遠慮したような、心を砕いているような表情を時々思い起します。娘さんとしては又おのずから様々の感情でしょう、だって、父があんなに万全をつくして確保してくれようとした幸福、しっかり枠をつけてそこから逃げないようにしてくれた筈の幸福は、こんなにもあっさり破れたのですもの。父さんの力をもってしても及びがたき人生を痛感しているでしょう。

そして私はこう考えるのよ。父さんの愛は常識に立ちすぎていて、幸福と世上に称する条件を、そのまま固定的に揃えて、それで幸福を確保しようとするところに悲劇があります。勇気をふるって、お前の不幸をも賭して幸福をつかまえて見よ、という境地に立っていません。勿論そこまで行くのは謂わば一つの禅機です。底を抜いたところがいります。娘さんの人柄に対してそういうのも無理かもしれません。しかし人生はそういうものよ、ね。そこに千年の巖があるのです。巖に花も咲きます。つながりの工合だけで決定されてゆく人生というものは、謂わば果敢ないものですね。

現実に身のふりかたをきめるとなって数々の困難のあることもよくわかります。身をすててこそ浮ぶ瀬もあれ、というのは古今集の表現で、時代的なニュアンスが濃いが、最も勇猛的な解釈もつくわけです。