Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ごくちゅうき

獄中記

大杉 栄

Lesen Sie 獄中記 (ごくちゅうき) von 大杉 栄 (おおすぎさかえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.988 Zeichen · 58 Bildschirme

Aozora Bunko

」

「それや、よかった。ほかには、君のほかに誰か来たか。」

「いや、僕だけだ。」

と僕は答えて、ひょいと顔を引っこめた山口を「おい、おい」とまた呼び出した。

「ほかのものはみんなどこにいるんだ、西川(光二郎)は?」

「シッ、シッ。」

山口はちょっと顔を出して、こう警戒しながら、また顔を引っこましてしまった。コトンコトンと遠くの方から靴音がした。僕は急いでまた寝床の中へもぐりこんだ。靴音はつい枕許まで近く聞えて来たが、まただんだん遠くのもと来た方へ消えて行った。

「コツコツ、コツコツ、コツコツ。」

とまた隣りで壁を叩く音がした。そしてこの隣りの男を仲介にして、その隣りの○○という男と、しばらく話しした。西川は他の二、三のものと二階に、そしてここにも僕と同じ側にもう一人いることが分った。

僕はもう面白くて堪らなかった。きのうの夕方拘引されてから、初めての入獄をただ好奇心一ぱいにこんどはどんなところでどんな目に遭うのだろうとそれを楽しみに、警察から警視庁、警視庁から検事局、検事局から監獄と、一歩一歩引かれるままに引かれて来たのだが、これで十分に満足させられて、落ちつく先のきまった安易さや、仲間のものとすぐ目と鼻の間に接近している心強さなどで、一枚の布団に柏餅になって寝る窮屈さや寒さも忘れて、一、二度寝返りをしたかと思う