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Japanische Klassiker mit Furigana

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こはくのパイプ

琥珀のパイプ

甲賀 三郎

Lesen Sie 琥珀のパイプ (こはくのパイプ) von 甲賀 三郎 (こうがさぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.109 Zeichen · 37 Bildschirme

Aozora Bunko

昨年の六月末の或る晴れた日の午後である。彼岩見は、白の縞ズボンに、黒のアルパカの上衣、麦藁帽に白靴、ネクタイは無論蝶結びのそれで、丁度当時のどの若い会社員もした様な一分の隙もない服装で、揚々としてふくらんだ胸、そこには本月分の俸給の袋と、もう一封それは今年の夏は多分駄目とあきらめていた思いがけないボーナスの入った袋をしっかり収めて、別に待つ人もない独り者の気易さは、洋服屋の月賦、下宿の女将の立替とを差引いて、尚残るであろう所の金を勘定して、実際は買わないが買いたい処のものを思い浮べながら、一足々々をしっかり踏んで銀座街の飾窓から飾窓へと歩いていたのである。

一体散歩に金はいらぬ筈である。然し懐に費っても差支えのない金を持って、決して買いはしないが、買いたいものゝ飾窓を覗き込む「よさ」は一寸経験のない人には判らない事である。岩見も今この「よさ」に浸って居るのであった。

彼はとある洋品店の前に足を止めた。その時にもし彼を機敏に観察して居るものがあったら、彼が上衣の袖をそっと引張ったのに気がついたであろう。それは彼がこの窓の中に同僚の誰彼が持っていて、かね/″\欲しいと思っていた、黄金製カフス釦を見入った時に、思わず自分の貧弱なカフス釦が恥しくなって、無意識にかくしたのである。