Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ことのそらね

琴のそら音

夏目 漱石

Lesen Sie 琴のそら音 (ことのそらね) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.985 Zeichen · 42 Bildschirme

Aozora Bunko

曲りくねってむやみやたらに行くと枸杞垣とも覚しきものの鋭どく折れ曲る角でぱたりとまた赤い火に出くわした。見ると巡査である。巡査はその赤い火を焼くまでに余の頬に押し当てて「悪るいから御気を付けなさい」と言い棄てて擦れ違った。よく注意したまえと云った津田君の言葉と、悪いから御気をつけなさいと教えた巡査の言葉とは似ているなと思うとたちまち胸が鉛のように重くなる。あの火だ、あの火だと余は息を切らして馳け上る。

どこをどう歩行いたとも知らず流星のごとく吾家へ飛び込んだのは十二時近くであろう。三分心の薄暗いランプを片手に奥から駆け出して来た婆さんが頓狂な声を張り上げて「旦那様! どうなさいました」と云う。見ると婆さんは蒼い顔をしている。

「婆さん! どうかしたか」と余も大きな声を出す。婆さんも余から何か聞くのが怖しく、余は婆さんから何か聞くのが怖しいので御互にどうかしたかと問い掛けながら、その返答は両方とも云わずに双方とも暫時睨み合っている。

「水が――水が垂れます」これは婆さんの注意である。なるほど充分に雨を含んだ外套の裾と、中折帽の庇から用捨なく冷たい点滴が畳の上に垂れる。