Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうじょうるてん
生々流転
岡本 かの子
Lesen Sie 生々流転 (しょうじょうるてん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 297.521 Zeichen · 586 Bildschirme
途端に樋の向い側の縁から小川へ飛び込んだらしい背に一疋を負うた二疋のつながりの蝗が水に落ち込んで、見ているうちに、樋の水の蝗も小川の蝗も櫓のように脚を跳ねて游ぎ出しました。けれども縁に到かないうちに樋の水の蝗は先に姿が見えなくなり、小川の蝗も小川に打ち冠さっている竹林の蔭の黒味に隠れて見えなくなりました。ゆるい水車の音が聞えます。
わたくしはほっと息を吐いて立上り、水音を背にして田圃の方を眺め渡しました。しまは「仏さまの花、仏さまの花」と言って頻りに野の花を蒐めています。わたくしは今立っている小川の縁の道の赤土が、昼過ぎの陽に照され、にちゃにちゃして茜色の雲を踏んで立っているような気持のするのに、眼の前一面に実のり倒れた金色の稲田を見渡して跼蹐んだ気持は何もかも何処かへ持って行かれました。
わたくしはまた「はーっ」と今度は息をもっと深く吐きました。こゝは一たいどこであろう。そして自分はどうしてこんなところへ来ているのであろう。
三月の雛祭りに漆塗りの盃で飲まされる白酒のにおいと麦こがし菓子のにおいと混ぜたような、子供をもうと/\させる香気が天地に充ち満ちている、その上、とき/″\風がその香気の濃い塊を頬に吹きつけます。