Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しょうじょうるてん

生々流転

岡本 かの子

Lesen Sie 生々流転 (しょうじょうるてん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 297.521 Zeichen · 586 Bildschirme

Aozora Bunko

と話します。橋詰を曲ったときから、浄瑠璃のサワリを弾いている音が聞えましたが、来てみると、わたくしの家の母の部屋からでした。千本格子の中から聞える三味線は、長唄のものを使っているらしく、浄瑠璃のあの節太い写実の調子はやさしく扱かれ、たゞ美しいだけの抒情詩の耳触りになっています。

それに合せて細く加減して声を出している初老近い男の声があります。節と節との合間に「どうです、もっと声を張りますか」と言ったのは、番頭の嘉六でした。母は身振りで返事をしたものか声は聞えませんでした。

わが娘の嫁入りの周旋役、そして自分への遺族手当の継続の鍵を握っているお店の大番頭、その嘉六が今度のわたくしの事件から度び/\わたくしの家へ出入りするからは、母がなんで彼の籠絡に骨を折らずに置きましょうぞ。わたくしは、この浄瑠璃のおさらいをちっとも不思議に思わずに、家の前を通り過ぎて濠川に架っている小橋を渡り、明るい人形町通りへ出ました。

それは、銀座でもなく、新宿でもなく、神田の神保町通りでもなく、また上野の広小路、牛込の神楽坂、麻布の十番でもなく、この東京の下町の盛り場の賑いは一風変っております。