Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

しょうじょうるてん

生々流転

岡本 かの子

Lesen Sie 生々流転 (しょうじょうるてん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 297.521 Zeichen · 586 Bildschirme

Aozora Bunko

ふと今頃は、わたくしの失踪で池上の寮でも、母の家でも夜明しで騒いでいることが思い出されると、眼をぱっちり開きます。すると、すぐそれを撫で臥せるように男の地声が力を張って参ります。その親鶏が雛鶏に向うときのような太暖かい声の響きは、わたくしに去年のクリスマスまえ、学園の丘の河上の多那川べりで遇った乞食の老人の声を思い起させます。それを媒介にして、また、死ぬ前、あれほど、土や菰の上をあこがれた乞食の血筋の父親の言った言葉を思い出します。「人間は四十を過ぎたら元の根に還るものだ。生涯を出直すにしても一たんは根に帰るものだ。そうしなければ心が寂しくてやり切れない」

わたくしは、また、眼をぱちりと開きます。すると、すぐ傍の男の地声が力を張って撫で臥させます。

夢とうつゝの間に何度、こういうことを繰返しましたでしょうか。そのうちわたくしは、自分も乞食になって満足し、気早い心で、土の上に臥ているように思い做されて来ましたのは妙でした。傍には気の置けない若い男の乞食がいて護っていて呉れる。いまはその他、何も望むところはない。わたくしはたゞこの四月ほどの間の疲労熱を冷たく湿った土に吸い取らせて、ぐっすり眠りさえすればいゝ。