Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうじょうるてん
生々流転
岡本 かの子
Lesen Sie 生々流転 (しょうじょうるてん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 297.521 Zeichen · 586 Bildschirme
お艶の深い懊悩の傍に在って、もしお艶が一口でも「あなた一緒に死んで呉れない」と声をかけられたなら、寧ろ悔が取戻せるように喜んでわたしは死んだであろう。当面の気持としてその方がどのくらい楽かも知れなかった。だが流石にそこはお艶だとわたしは今でも妙な感心の仕方をしている。かの女はその一言を言わなかった。かの女にすればわたしにいつまでも自分の深い懊悩を眺めさして、わたしに幾久しく悔いさせてやるという執念深い復仇の念と、これほどの結果になるとは知らずにこの人はうっかり仕出かした事だのに可哀相にという憐みの心とが組打ちしてかの女の口を開かせなかったという。
お艶という女は「もう取返しがつかない」という言葉をよく口癖に言う女であった。例えば襦袢の布れ一つ裁ち損ねても、まるで過って処女性を失った人のようにそれを言って悔いに悔いた。玄人出の女にしては珍らしく諦めの悪い女であった。わたしから言うのもおかしいが、かの女の言葉そのまゝを伝えると、かの女はわたしの他のどこにも魅力を感じない。しかし世間に珍らしい美男である点からその心も共にそっくり自分の持ちものとして永く自分のそばに置きたかったと言う。