Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうじょうるてん
生々流転
岡本 かの子
Lesen Sie 生々流転 (しょうじょうるてん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 297.521 Zeichen · 586 Bildschirme
斯くて永らく女から遠ざかっていたわたしは女の肉体なるものに仄かな月明りを感じ、神聖な白い碑を感じ、長生の霊果を感じるのだ。この頃よく/\考えてみるのにわたしは生涯に自分自身のためとして何一つこの世にいのちを彫り止めたものがないということが判った。それがいまわたしはわたしの恋ごころを必死の鑿としておまえの肉体の壁にわたしのいのちを彫り止めようと企てさした大きな原因らしい。滅多に死を惧れないと言ったわたしは既にこの世ならざる世界の不朽を認めるものである。だが、この世の上にとて絶対に未練がないというわけではない。われを遺さずして空しくこの世を去るのか。その刹那、わたしはおまえの肉体を素材の大理石のように感じたのだ。
いわゆる人の恩を返すということにかけてはわたしほど恵まれた運の人間は少いだろう。父親のためには彼の理想の踊りの名跡に於て事実上日本一の幇間になり得たし、師匠のためには、この野暮と田舎風の俳句横行の時代に、江戸座の俳諧を再興するほどの業蹟を挙げ、幇間にして真の芸術家のわたしに成り得たし、こういうのは痴人の類かも知れないが、わたしは父親や師匠が夢に現れて何度もわたしに礼を述べたのを見た。