Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

せいとしとのきろく

生と死との記録

豊島 与志雄

Lesen Sie 生と死との記録 (せいとしとのきろく) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.961 Zeichen · 39 Bildschirme

Aozora Bunko

冷たかった。底の知れない冷たさだった。私はその冷たさを自分の口に吸い取るように、じっと唇を押し当てた。私の全身に、冷たい戦慄が伝わった。そして私は、はっと或る恐れを感じた、或る聖なる恐れを。私はまた、堯の顔に白布を被せてやった。自分の胸の中の肉を掴み去られた感じがした。

そしてそれが極度に聖であった。私は眼を瞑った。

家に着くと、私は堯を抱いたまま芳子の室に通った。赤ん坊の顔に私は一番に眼を落した。

私は全身に震えながら芳子の眼と見合した。芳子の緊張した視線が私の胸を刺した。

「何時に?」と芳子は云った。

「一時四十五分!」と私は答えた。

私は堯を芳子の所へ抱いて行ってやった。芳子は寝ながら、堯を抱き取った。顔の白布を取ってじっとその顔を見た。微笑んだ生きた顔が其処にあった。それから、胸に組み合した小さな両手を見た時、芳子は急に堯を抱せしめた。歯をくいしばって涙をはらはらと流した。

「坊や、坊や!」と芳子は云った。「なぜお母さんが居るうちに死ななかったの! 坊や、坊や!」

私はその側に坐って、芳子の肩を捉えた。そしてその涙にぬれた顔を私の方へ向けさした。