Japanische Klassiker mit Furigana
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せいしまんじどもえ
生死卍巴
国枝 史郎
Lesen Sie 生死卍巴 (せいしまんじどもえ) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 91.598 Zeichen · 182 Bildschirme
さて今碩寿翁は行燈の側へ、膝を揃えて坐っている。
「この立派過ぎる原形のままでは、人に売ろうにも買い手があるまい。惜しいけれども割ることにしよう」
憑かれているような碩寿翁であった。こう声に出して呟くと、またも懐中へ手を入れたが、掌の中へ隠れるほどにも、小さい長方形の揉み皮張りの、小箱を取り出して膝の上へ置いた。すぐささやかな音のしたのは、その箱の蓋があいたからであろう。何が箱の中に入っていたか? 日本の国内では見られないような、精巧を極めた洋鑢だの、メスだの錐だのの道具類が、整然として入っていた。
碩寿翁であったがメスを取ると、右手でメスの柄を握って、注意しいしい下へ下ろした。
下りて行くメスの下にあるのは、真に美しい鯖色の光を、ギラギラと空へ投げている、そう云う品物を底に蔵した、例の小さい箱であった。
しかるにこの時隣りの部屋で、囁き合っている男と女があった。
「今夜こそどうでも取らなければならない」
こう云ったのは男であった。
すると女が囁き返した。
「そうとも、どうしても取らなければならない」
「眠っているだろうか? 起きているだろうか?」
「そっと襖をあけてごらんよ」