Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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せいしまんじどもえ

生死卍巴

国枝 史郎

Lesen Sie 生死卍巴 (せいしまんじどもえ) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 91.598 Zeichen · 182 Bildschirme

Aozora Bunko

と、すぐに窓があき、娘の顔が現われたが、家内から射し出る燈火の光を、背景としているがために、顔立ちなどはわからなかった。清らかな白い輪廓ばかりが、ぼんやり見えるばかりであった。

娘は露路の左右を見たが、

「小父様、何にも見えませぬ」

「さようか」と、家内で男の声が云った。

「では見ない方がよいだろう。……そうだ、なるたけ穢らわしいものは」

「ああ小父様、黒い物が見えます。おおおお死骸でございます。若い方の死骸でございます。露路の真ん中に倒れております」

「助けておいで」と、男の声がした。

「可哀そうな不幸な贄なのだよ」

つづいて「はい」という声が聞こえて、窓から娘の顔が消えた。

と、戸をあける声がした。

松平碩寿翁は見付けられなければなるまい。

いやいや碩寿翁はこの時には、既に露地から走り出していた。すなわち窓から娘の顔が、引っ込むと同時に身を躍らせて、露路から外へ飛び出したのであった。

颯と一揮

(あのお方があんな所におられようとは。……俺はとうとう感付かれてしまった! ……俺に恐ろしいのはあのお方ばかりだ。……俺は邸へは帰られない。俺は体を隠さなければならない。