Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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せいしまんじどもえ

生死卍巴

国枝 史郎

Lesen Sie 生死卍巴 (せいしまんじどもえ) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 91.598 Zeichen · 182 Bildschirme

Aozora Bunko

と云っても相手を見ることは出来ない。深山の暗夜であるからである。焔は消えたが余燼はあって、五六本の松火が地上に赤く、点々とくすぶってはいたけれど、光は空間へは届いていなかった。案内の知れない山中であった。諸所に大岩や灌木の叢や、仆れ木や地割れがあることであろう。飛び出して行って叩っ切ろうとしても、躓いて転がるのが精々であった。

(こ奴らは、一体何者なのであろう?)

老人の祈りめいた叫び声によって、マホメット教徒であるらしい――そういうことだけは思われた。

(丹生川平の叔父の一族を、敵として憎んでいるらしいが、どういう理由から憎むのであろう?)

すると不意に茅野雄の記憶の中へ、従妹の浪江から送り来された、書面の文句が甦えって来た。

(父も母も無事でございます。でも性質は変わりました。敵を持つようになりました。只今私達の一族は、苦境にあるのでございます。どうぞどうぞおいでくださいまして、私達一族の味方となって、私達をお助けくださいませ。――そうだ、こんなように書いてあった。その敵というのがこ奴らなのであろう)

「だが何故俺を殺そうとするのか?」

(俺が叔父達の一族だからであろう)