Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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でんえんのまぼろし

田園の幻

豊島 与志雄

Lesen Sie 田園の幻 (でんえんのまぼろし) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.053 Zeichen · 17 Bildschirme

Aozora Bunko

全くの田舎だが、来てみるとなるほど仕事がよく出来た。宗吉もめったに私の邪魔をしないようにしているらしい。あと一週間ぐらいで私は東京に帰るつもりだった。

「へえー、あと一週間ね……。」なにか心残りらしい面持ちなのだ。

「また御厄介になりに来ますよ。」

「そいつが、当にならん。兄さんもそう言ったが、あれっきりだ。然し、田舎はつまらんでしょう。」

「東京もつまりませんよ。時々出ていらっしゃるから、お分りでしょうが、何もかも薄っぺらになっちゃいましてね……。」

「はは、そりゃあそうだ。」

鍋の鶏肉はもう煮えたっているし、野菜の煮附は大丼に盛ってあるし、先刻の川魚は甘煮にして大皿に並べてあった。そして手製のドブロクが何よりも上味だった。

「つまり、大戦のおかげで、東京と近在の田舎とが、いろんな点で平均してきたわけだな。平均して軽薄になってきた。」

平均の例として、彼は私のことを持ち出した。昔は東京からのお客さんといえば、村人たちの注目の的となったものだが、この節ではそうでなく、私のことだって、誰も気に留める者はない……。その説は私にちょっと意外だった。私は以前の砂糖黍の一件を持ち出したが、それも彼に依れば、一時はやった買出人と同視されたわけで、つまり大して注目されなかったことになるのである。