Japanische Klassiker mit Furigana
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いなかいしのこ
田舎医師の子
相馬 泰三
Lesen Sie 田舎医師の子 (いなかいしのこ) von 相馬 泰三 (そうまたいぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 37.947 Zeichen · 76 Bildschirme
彼は二十三歳の時、東京のある専門学校を卒業した。その後、一年半の間、就職難のために父の補助を受けて、それから自活の途に入った。思わしい事もなかったにかかわらずとにかく押しも押されもしない一個の男として、大勢の他人に混じって独立して来た。しかるに、彼の思想がようやく根を生じ次第に生長してゆくにつれて、世間が追々狭くなってゆくのを彼自身に感じた。思わざる打撃が徐々に迫って来た。三度目の解雇の時、その雑誌社を出て家へ帰る電車の中で、「みんなが、どうも勘違いをしているのだ。」こう思った。彼は自分の友に向って、
「なあに、窮迫がどれほどひどくなったって、この俺を滅ぼせるものではない。俺は、泥まみれになったって俺の道を歩き続けるのだ。」こう語った。
しかし、世間の事はきわめて簡単で明瞭であった。下宿の払いが滞り滞りして、「もう、どうも。」と云う所まで来た時、持ち物をすべて取り上げられてそこを突き出されるのを彼は拒む訳にはゆかなかった。
「こうなっては、いよいよしかたがない、道普請の土方にでもなるほかに道はないだろう。」実際こう彼には思われたのであった。
郷里の父は、とうとう彼に手紙を与えた。