Japanische Klassiker mit Furigana
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いなかいしのこ
田舎医師の子
相馬 泰三
Lesen Sie 田舎医師の子 (いなかいしのこ) von 相馬 泰三 (そうまたいぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 37.947 Zeichen · 76 Bildschirme
とはいえ、そこには愚かな濃い靄が一ぱいにたちこめていたので、その響はまったく鋭さのない遠い朧ろ朧ろしいものになっていた。……
お志保はしばらくしてそこを去った。
白い光の月が空にあった。時々、薄い雲がそれにかかって虹のような色に染められた。庭には木々の黒い影が、足の入れどころもないまでに縦横に落ちていた、庸介は小松の林をぬけ、池を廻って母屋の裏手へ出た。ばさっとした八ツ手の木の上からちらちらと灯が洩れていた。それはお志保の居間の小窓であった。幸いにもカーテンが半ば引かれてあった。彼は、まるで※(始め二重括弧、1-2-54)夜の獣※(終わり二重括弧、1-2-55)のようにして息を殺ろしてその窓下へ忍び寄った。そーっと、覗き込むと内にはそんな事とは少しも知らないお志保が、窓側へより添うて一人何かせっせと編物をしていた。赤い笠をつけた小ランプの光りが彼女の顔のところだけをまともに照らしていた。頬へ垂れたほつれ毛の一筋一筋まではっきりと浮いて見えた。彼女の目は編物の進められてゆく所に熱心に注がれていた。金属製の編棒が、動くたびに冷たい色にちかちかと光った。