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Japanische Klassiker mit Furigana

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とめさんとそのおんな

留さんとその女

山本 周五郎

Lesen Sie 留さんとその女 (とめさんとそのおんな) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.799 Zeichen · 14 Bildschirme

Aozora Bunko

だから留さんはいつも舳先のところに立って叫んでいる。

「おも舵だ、石炭船が来るぞ」

とかあるいはまた、「あ、危ねえ、ゴスタンをかけろ、とり舵だ」

とか。その役割は留さんの気に入ったらしい、彼はしばしばこう云っていた。

「おらがいねえば三十五号は闇だ」

みんなは彼をすっかり小馬鹿にしている。

一番ちびの十六になる幸保にさえせせら笑いをされている、しかし彼自身はそんなに自分を見限ってはいない、二十年まえにそう思ったように、今でも、

「もうそろそろひと花咲せるのもいい」

と考えている。

そこで蒸汽河岸の高梨の奥さんに、毎月いくらずつかの貯金をしてもらっているわけだ。それはちびの幸保までが、

「蒸汽乗りの面汚しだ」

と憤慨するほど熱心なものであった。

彼の故郷は霞ヶ浦に面した鉾川にある、父親は漁夫で彼はその二番息子に生れた。五人の兄弟と一人の妹がいる、彼はそこでも、親や兄弟たちから小馬鹿にされて育った、彼だけは漁にも伴れて行ってもらえなかった。ただひとつその頃から馬鹿踊が自慢で、これだけは誰にも負けぬ自信があったし、鉾川の人たちも、

「馬鹿踊りは留さんにかぎる」

と許していたのである。